シンスプリント(脛骨疲労性骨膜炎)
シンスプリントは、すねの骨の内側に沿って痛みが生じるスポーツ障害で、正式には「脛骨疲労性骨膜炎」と呼ばれます。骨を覆う薄い膜(骨膜)に炎症が起こることで痛みが生じる疾患です。ランニングやジャンプなどの運動を繰り返し行うスポーツ選手に多く見られ、「初心者病」とも呼ばれることがあります。
シンスプリントの症状
シンスプリントの典型的な症状は、すねの骨の内側下半分に沿った鈍い痛みです。運動開始時に痛みを感じ、運動を続けているうちに一時的に軽減することもありますが、運動後に再び痛みが現れます。進行すると、運動中も持続的に痛みを感じるようになり、さらに悪化すると歩行時や安静時にも痛みを感じるようになります。
痛みの範囲は比較的広く、すねの内側に沿って5~10センチメートル程度の範囲で痛みを感じることが特徴的です。患部を押すと痛みがあり、運動後に軽い腫れを伴うこともあります。
シンスプリントの原因
シンスプリントの主な原因は、すねの骨への繰り返しの負荷です。ランニングやジャンプの着地時に、足首やすねの筋肉が強く働くことで、骨膜に過度なストレスがかかり炎症が生じます。
発症しやすい要因として以下のようなものがあります
▸急激な練習量の増加:体が慣れていない状態での過度な運動
▸硬い地面での練習:アスファルトやコンクリートでの長時間の練習
▸不適切なシューズ:クッション性の乏しい靴や足に合わないサイズの靴
▸足の形の問題:扁平足や足首の柔軟性不足
▸筋力不足・バランス不良:ふくらはぎやすねの筋肉の弱さ
▸運動フォームの問題:着地方法の不良
シンスプリントの治療
保存療法
シンスプリントの治療は保存療法が中心となります。
【運動の調整】
▸痛みを引き起こす運動の休止または軽減
▸完全に運動を中止する必要はないが、痛みが出ない程度に活動量を調整
【急性期の治療】
▸患部を冷やす(アイシング)
▸痛み止めや湿布の使用
▸テーピングやサポーターの装着
【理学療法】
▸ふくらはぎとすねの筋肉のストレッチ
▸足首の柔軟性改善
▸下肢全体の筋力強化
▸特に足首を上に向ける筋肉(前脛骨筋)の強化
【装具・靴の見直し】
▸クッション性の良いシューズの使用
▸足底板(インソール)の装着
段階的復帰
症状が改善したら、以下の順序で段階的に運動を再開します。
▸軽いジョギングから開始
▸痛みが再発しないことを確認
▸徐々に運動の強度と時間を増加
▸完全復帰まで数週間から数ヶ月を要する場合もある
疲労骨折
疲労骨折は、骨に繰り返し小さな力がかかることで生じる骨折です。一度の大きな外力ではなく、継続的なストレスが蓄積されることで骨に微細なひびが入り、最終的に骨折に至る疾患です。スポーツ選手、特に長距離ランナーに多く見られ、早期発見・早期治療が重要です。
疲労骨折の症状
疲労骨折の初期症状は、運動時の軽い痛みから始まります。最初は運動後に痛みを感じる程度ですが、進行すると運動中も持続的に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、歩行時や安静時にも痛みを感じるようになります。
痛みの特徴は、骨折部位に限定されたピンポイントの痛みです。患部を指で押すと強い痛みがあります。腫れや熱感を伴うこともありますが、明らかな外見上の変形は通常見られません。
好発部位は以下の通りです
▸中足骨(足の甲の骨):最も多い部位
▸脛骨(すねの骨):ランナーに多い
▸腓骨(すねの外側の細い骨)
▸大腿骨(太ももの骨):比較的稀だが重篤
▸肋骨:ゴルフや野球選手に見られる
疲労骨折の原因
疲労骨折の根本的な原因は、骨の修復能力を超える繰り返しのストレスです。通常、骨は日常的な負荷により微細な損傷を受けますが、適切な休息により修復されます。しかし、過度な負荷が継続されると、修復が追いつかずに骨折に至ります。
危険因子として以下があります
▸急激な練習量の増加:体が適応する前の過度な負荷
▸栄養不足:カルシウムやビタミンDの不足
▸女性アスリートの3主徴:摂食障害、無月経、骨粗しょう症
▸骨密度の低下:特に女性ランナー
▸不適切な練習環境:硬い地面での練習
▸シューズの問題:クッション性の不足や過度の使用
疲労骨折の治療
保存療法
多くの疲労骨折は保存療法で治癒します。
【安静・活動制限】
▸骨折を引き起こした活動の完全休止
▸安静期間は通常4~8週間程度(部位や程度により異なる)
【固定・装具療法】
▸必要に応じてギプスやサポーターの使用
▸松葉杖の使用(足の疲労骨折では体重をかけない)
【薬物療法】
▸痛み止めの使用
▸カルシウム・ビタミンDの補充
▸女性では月経異常がある場合のホルモン治療
段階的復帰と予防
骨折の治癒確認後、段階的にスポーツ活動を再開
▸軽い運動から開始
▸徐々に強度を上げる
▸痛みが再発しないことを確認
【予防対策】
▸適切な栄養摂取
▸段階的な練習量の増加
▸適切なシューズの使用
▸定期的な休息日の設定
手術療法
以下の場合に手術を検討
▸保存療法で治癒が得られない場合
▸特定の部位(大腿骨頚部など)の疲労骨折
▸完全骨折に進行した場合
肉離れ
肉離れは、筋肉が急激に強く収縮したり、過度に引き伸ばされたりすることで、筋肉の一部が損傷する急性のケガです。筋肉の線維が部分的に切れた状態で、正式には「筋損傷」や「筋断裂」と呼ばれます。スポーツ活動中に多く発症し、適切な治療とリハビリテーションが重要です。
肉離れの症状
肉離れの症状は、損傷の程度により3段階に分類されます。
軽度(1度):筋肉の一部の線維が損傷
▸軽い痛みと違和感
▸歩行は可能
▸軽い圧痛
中等度(2度):筋肉の線維がより多く損傷
▸明らかな痛みと機能障害
▸歩行困難
▸腫れと内出血
▸筋肉の凹み(陥凹)を触れることがある
重度(3度):筋肉が完全または大部分で断裂
▸激痛と著明な機能障害
▸歩行不可能
▸明らかな筋肉の凹みと内出血
受傷直後は「プチッ」「ピキッ」という音を感じることも多く、その後激しい痛みが生じます。
好発部位
肉離れが起こりやすい筋肉は以下の通りです。
▸ハムストリングス(太ももの裏の筋肉):最も頻度が高く、短距離走やサッカーでよく見られます。
▸腓腹筋(ふくらはぎの筋肉):テニスやバドミントンなど、急激な方向転換で発症します。
▸大腿四頭筋(太ももの前の筋肉):サッカーのキック動作などで発症します。
肉離れの原因
肉離れの原因は、筋肉への急激で過度なストレスです。以下のような状況で発症しやすくなります。
動作要因
▸急激なスタートダッシュ
▸急激な方向転換
▸ジャンプからの着地
▸急なストップ動作
身体的要因
▸筋力不足・筋疲労
▸柔軟性の不足
▸筋力のアンバランス
▸過去の肉離れの既往
環境要因
▸不十分なウォーミングアップ
▸寒い環境
▸過度な練習量
▸脱水状態
肉離れの治療
急性期治療(受傷後48~72時間)
肉離れの急性期には、RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)が基本となります。
▸安静(Rest):痛みを感じる動作を避け、必要に応じて松葉杖を使用します。
▸冷却(Ice):患部を15~20分間冷却し、これを2~3時間おきに繰り返します。
▸圧迫(Compression):弾性包帯やサポーターで適度な圧迫を加えます。
▸挙上(Elevation):可能な限り患部を心臓より高い位置に保ちます。
痛み止めの使用も効果的ですが、炎症を抑えすぎると治癒が遅れる可能性があるため、使用は最小限にとどめます。
亜急性期~慢性期治療
炎症が落ち着いたら(通常3~7日後)、段階的に動かし始めます。
▸物理療法:温熱治療、電気治療、超音波治療などを組み合わせます。
▸理学療法:痛みのない範囲での軽いストレッチから開始し、徐々に筋力強化を行います。段階的なプログラムが重要で、急激な負荷は再発につながります。
スポーツ復帰
完全にスポーツに復帰するまでには、軽度で2~3週間、中等度で4~8週間、重度では数ヶ月を要することもあります。復帰時期の判断は、痛みの消失、筋力の回復、柔軟性の改善などを総合的に評価して決定します。
予防対策として、十分なウォーミングアップ、定期的なストレッチ、筋力強化、適切な休息が重要です。一度肉離れを起こした筋肉は再発しやすいため、特に注意深いケアが必要です。